小林正観さんからこう聞いた第五章③仙人
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最終更新日:2022/08/23
小林正観さんからこう聞いた
芥川龍之介の小説に「仙人」という話があります。かつて正観さんが朗読集を作ろうとしたことがありましたが(完成までには至りませんでした)、その中で正観さんが取り上げた小説のひとつがこの「仙人」です。「今なら読めるかもしれない」という正観さんの言葉が気になり、私はすぐにこの小説を読んでみました。非常に短い話です。主人公の権助は仙人になれる奉公先を探していました。今でいうハローワークにかけ込んだわけです。ある医者の夫婦が権助を雇いました。「20年間無給で働きなさい。そうしたら仙人になる方法を伝授する」と。権助はその言葉を信じて20年間、働きます。もちろん、その夫婦は仙人になる方法など知りません。権助の思いを利用してタダ働きをさせたのです。20年間働き、権助は「仙人になる方法を教えてください」とおかみに言いました。おかみは困りました。そして権助に言いました。「庭にある木に登り枝にぶら下がりなさい。そして手を放しなさい」。権助に「できません」と言わそうとしたのですね。しかし、権助は従いました。そして、手を放し落ちる、と思ったその瞬間、権助の体が空中にふわりと浮かんでいるのです。「ありがとうございます。おかげで仙人になることができました」と権助は空の彼方に消えました。
この小説について私が解説をすることはしません。さて私は日雇いの警備員の仕事を始めます。そこのシステムは面白くて、100人ぐらい登録している警備員がいるのですが、「あの人がいる現場はNG」ということができるんです。ようするに若い警備員が怖いリーダーがいる現場を避けられるように事務方が配慮してくれるのです。もちろん私はNGはありませんから、必然的に私が行く現場のリーダーはみんなから避けられるような人たちばかりになりました。自分よりもひと回りも年下のリーダーに呼び捨てにされ怒鳴られ・・・。私は特にイライラしたりせず、怒られれば「すいません」と謝り、口答えもせずに言うことを聞いていたわけです。するとどうなるか。必ずと言っていいほど仲良くなります。気に入られるのです。そういうお試しを一年ぐらい続けて、私と家族は横浜を離れることになり、警備員も辞めました。
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