小林正観さんからこう聞いた第三章④愛情
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最終更新日:2022/08/23
小林正観さんからこう聞いた
二十歳を過ぎて自立をした娘さんについて話すある父親。何があったのか事情は忘れましたが、「経済的な支援はしない。本人のためにならない」と。それを聞いていた正観さんは「にこっ」と笑って、「あなたに経済的な余裕があって、娘さんが困っているのならば援助をしてあげればいいではないですか」とおっしゃいました。
これは正観さんご自身の話ですが、娘さんが「〇〇が欲しい」と言ったときには買ってあげたそうです。たとえば「携帯電話が欲しい」と言われた時も買ってあげた。結局、三日くらいで娘さんは飽きて放置されてしまったそうなのですが、正観さんはそれを「お金の無駄」になるとは思わずに、その後も本人が欲しいと言うものがあれば買ってあげていたそうです。こういう話を聞くと、「それではわがままに育ってしまうのではないですか?」と言う方がいますが、正観さんの考えは違います。
子どもは、物が欲しいのではなく親の愛情が欲しいのです。ですから「ダメ」と言われるとつらい。正観さんのように、おそらくほぼ100%「いいよ」と言っていると、子どもは「この親は『いいよ』と言ってくれる親だ」と安心する。すると、次第に本当にほしいものしか要求しなくなります。逆に、子どもの要求に対して90%「ダメ」、10%「いいよ」と言っている親がいるとします。すると、子どもはこの「いいよ」を親から引き出すために10個要求しないといけなくなります。10の「いいよ」を引き出そうと思ったら100個の要求です。これが、私たちが子どもに対して「わがまま」とレッテルをはっている状況かもしれません。
私はこの話を知っていたので、自分の娘に対して正観さんのように接してきました。娘はまったくわがままには育っていません。親の私から見て物に執着がなく育ったと思います。本当にほしい物があるときには相談をしてきます。感情的にならずに話合いをすることができます。思い通りにいかなくても駄々をこねたり騒いだりしません。
私は現在の児童福祉の仕事でもそのように子どもたちと接しています。私が出会うのはいろいろな事情があって親元から離れなければならなくなった子どもたちです。自分の要求に対して「いいよ」と言ってもらえること。そこには安心感があるのです。
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