小林正観さんからこう聞いた第二章③真似

公開日: : 小林正観さんからこう聞いた


 運転手をさせていただいたことで、私は小林正観という人物を観察する機会に恵まれていたとも言えます。正観さんは、年間300回以上の講演会をこなし、SKPという会社の経営もしていました。見知らぬ人から人生相談の電話がなります。正観さんのもとに集う、経営者や商売をしている方々のアドバイスにのっています。常人の仕事量ではありません。では、行動をともにしていたとき、正観さんが忙しそうにしていたかといえば真反対です。眠ったりボーっとしたり、私が想像する忙しいデキル人、移動時間は原稿を書いたり資料に目を通したり、ということは一度もありませんでした。ただ、ふと何かを思い出したように閉じた目をパチリと開き、電話をかけたりする姿は運転席からよくみました。そんなとき、正観さんの「おかげさま」の話を思い出し、「あ、今、おかげさまが電話をかけるように言ったのかな?」なんて、隣で勝手な想像をしていたものでした。突然、電話で人生相談を受けても、正観さんはまったく澱みなく答えていました。私ならば、「こちらからかけ直します」と間を置いて考える時間を持ちたいと考えますが、正観さんは水が流れるように答えていました。数秒間考える姿すら見たことがありません。これも、「正観さんの体を使って、おかげさまが答えているのかなあ」と隣で想像したものでした。




 私も、そういう正観さんの仕事の仕方を真似するようにしています。できているかどうかは別ですが。単純に、正観さんが仕事をする姿は格好いいのです。「学ぶ」の語源は「真似ぶ(る)」です。




 力を抜く、ボーっとすると言い換えてもいいかもしれません。別の章で詳しく書く予定ですが、私が正観さんを一言で表すとすると「今にくつろぐ人」。ただ私がボーっと仕事をし始めたら仕事にならないんじゃないかと思っていました。ところが、実際には、そのほうが、「こういうことをやってみたら」という頭に浮かんでくるものに素直に従うことができますので、柔軟性のある仕事ができるようになっています。シャープに考えることは一方ではいいことなのでしょうが、それは過去の記憶に照らし合わせて判断をするということなので、仮にそれがおかげさまの提案でも「でもなあ」「だってなあ」と拒否してしまいかねません。賢くあるよりも、「アホは神ののぞみ」というタイトルの本もあるくらいですが、アホになってお任せしてしまったほうが楽しい人生になりそうです。




「アホ」という言い方をしましたが、勉強をすることは続けます。自分が縁を感じる本を読んだり、話を聞きに行ったりします。自分以外の何者かにお任せする、とは言っても、自分は知らないことだらけなのですから、何歳になっても勉強は続けます。正観さんは2万冊の本を読んだそうです。学び続ける事は謙虚さにもつながることだと思います。あるとき正観さんはスピード違反を起こしてしまい、免許停止になってしまいました。そして講習を受けることになりました。正観さんにとっては罰金のお金よりもその講習を受ける時間をとることの方が大変だったのですが、その講習会での教官の話がとても面白かった、同じことを長く続けてきた方の話は面白いのですとおっしゃっていました。ある、正観さんをして「彼は面白い人物になります」と言わしめた若者がいました。彼がそのとき務めていた会社の研修で居眠りをしたことを笑いながら話していました。いわゆる悪自慢です。正観さんが上記の話をしたのはそのときのことで、それは「才能があっても相手を軽んじてはいけない、傲慢になってはいけない」ということを伝えたのだと思います。彼は今きっと面白い人物になっているのでしょう。




 物知りであることは、正観さんの言う魅力的な人の要素のひとつです。恋人がほしい、という若い方には、異性を追い求めることはやめて興味あるジャンルの本を読んで知識をつけることをすすめていました。




 私の地元、松江の講演会に正観さんが来たとき、「松江にはあらゆる水がある」という芥川龍之介の言葉を教えてくれました。「松江印象記」で、芥川龍之介は、水、つまり川や湖(宍道湖)だけではなく、お城や橋、その街並みを賞賛しています。私はまったくそんなことを知りませんでした。「自分が住んでいる街を賞賛してくれている人のことくらい知っておきましょうね」と正観さんから言われましたが、やはりそういう話をさらっとできる人は魅力的です。勉強をする分野はなんでもいいのですが、高級品は辞めたほうがいい。嫌味になってしまうからです。あとは、相手が知らないからといって馬鹿にするのはもってのほか。それをやると、一気に魅力を失ってしまいます。




 




 







 

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