正観さんからこう聞いた第四章⑤現実主義
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最終更新日:2022/08/23
小林正観さんからこう聞いた
「お釈迦様は現実主義者なのですね」と、ある方が正観さんに言いました。それに対し、正観さんは「そうなのです。釈迦もイエスも現実主義者なのです」と答えました。普段から淡々とした口調の正観さんですが、ときどきわずかに語気を強めて話すことがあります。このときの一言もそうでした。そして続いてこんな話をしてくれました。釈迦が「小さくても大切にするように」と言った三つのものの話です。ひとつ目は蛇の子ども。ふたつ目は王様の子どもです。みっつ目は忘れてしまいました。理由は、蛇の子どもは小さくても猛毒を持っているから、王様の子どもは将来王様になるからです。将来王様になるから子どもの頃から大切にしましょう、というのはなんだかサラリーマンの処世術みたいで、釈迦が本当に言った言葉かなと疑ってしまいます。その後、私はいろんな仏教の本をあたりましたが、残念ながら釈迦のこの話を見つけることはできていません。ちなみに、蛇の話については思い当たることがあったので私はその場で正観さんやその場にいた人たちに伝えました。それはあるテレビ番組でみた内容なのですが、とある蛇の研究所では、蛇を育てるのにとうぜん餌をやる必要があるのですが、大人の毒蛇に餌をやる時よりも、小さい子どもの蛇に餌をやるときのほうがはるかに緊張するそうです。それは小さいから餌のやり方が難しいのに、毒の強さは大人と同じだからだそうです。
「これは現実主義の話だな」と私が思い付く話を二つしておきます。具体的なエピソードから正観さんの現実主義とはこういうものだと理解していただくのがいいかと思います。
ある著名なお金持ちの話。その方(Aさんとしておきます)は最高で100億もの額を自らの才能ひとつで稼ぎました。ところが、Aさんは詐欺事件を起こし逮捕されてしまいました。そのときには貯金がゼロどころか数億円の借金まで抱えていました。なぜそうなってしまったのか。それは、自分がお金を持っていることをひけらかしてしまったからです。すると、それを求めていろいろな人たちが集まってきます。いかにお金を得るかを常に考えている優秀な人たち。正観さんですらそういう人たちにはかなわないであろう、とご自身で言っていました。ではどうやって身を守るか。それは、自分以外の人のためにお金を使うこと。慈善事業にお金を使うような人は目を付けられないそうです。正観さんは本当に自分以外のためにお金を使っていました。そしてそれは現実主義、あくまで損得勘定なのです。
踏み絵の話。踏み絵は、江戸幕府が禁止していたキリスト教の信者を発見するために用いられたものです。イエスが描いてある絵を踏ませる。信仰心があれば踏むことができないはずなので信者だということがわかるというわけです。何かで踏み絵の話になったときに、正観さんは「私がそのときの指導者か何かだったら『踏みなさい』と言います。踏めば処刑を免れることができるのですから。それで踏んで、また信仰をすればいいのです」と言いました。
正観さんが教えてくれた実践には「感謝」や「笑い」や「そうじ」があります。それだけ聞くと「実践というのは徳が高い行為をするもの」と思われるかもしれません。しかし、正観さんが言っているように「損得勘定だから長続きするのです」。私が十年以上も実践を続けているのはそこのところを理解しているからかもしれません。
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