社長から教わった社会人の品格㉚

公開日: : 社長から教わった社会人の品格


 社長のもとには多くの人生相談が寄せられていました。晩年は積極的には受けていなかったのですが、若いときは、社長の電話番号が勝手に広まって知らない方から次々と電話がかかってきていました。社長はそれらに対し、一つひとつ大切に応じていました。




 社長の答えはいつも同じで、「何が問題なんですか?」というものでした。大切にすると言っても、時間をかけて一つひとつの話を聞いていたわけではありません。




 たとえば、「子どもが学校に行かないんです」という相談に対して、「何が問題なんですか?親であるあなたが、子どもが学校に行かないという事実を受け入れたら問題はないですよね」と答えます。ほとんどの悩みは、「相手や状況を自分の思い通りにしたいだけ」。思い通りにすることをやめれば、問題も苦しみもないのです。




 私も本当に理解できているかどうか試されたことがありました。社長の会社を辞めて、アルバイトをして何とか家族を養っていたことがありました。子育ても一番大変な時期。「やっぱり問題はあるじゃないか」と思ってしまいます。




 この間、散歩をしていました。散歩といっても私の場合は2時間、多いときには4時間位歩き続けます。歩いているうちに、自分の体がすごく軽くなる瞬間が訪れます。あたかも歩いているのが自分ではないみたいです。そんなとき、頭の中でグルグル渦巻いていた悩みは消えています。あるとしても、重たかったその悩みはフワフワ宙に浮いている感じがして、私はそのフワフワしたものを眺めています。




 本当に問題があるのなら、それはあり続けるはずです。浮かんだり消えたりするのならば本当はないのではないか。しばらくしてまたその悩みが来ると「これは本当はないんじゃないかな」と次は冷静に眺めることができます。




 やはり「問題はない」と結論づけざるをえません。







 




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