少年院の仕事について知る。オレオレ詐欺で入院者に変化

公開日: : コラム

仕事の関係で某少年院を訪れました。


仕事で得た情報をブログにのせていいのか?

そういう思いもありますが、

社会に少年院のことをもっと知ってほしい、興味を持ってほしい

という少年院側の思いも確認しています。
院生個人についての情報を得たわけではありませんし、院側も公にしていい(むしろ伝えてほしいと私は解釈しましたが)情報しか話してはいないと思います。


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16歳未満でも罰はくだるのです


少年による凶悪事件が起こるたびに「少年法」に白羽の矢があたりますが、

少年刑務所

の存在を知っている方は少ないと思います。偉そうに言っていますが私も知りませんでした。

つまり、

少年だからといって“刑事罰”を受けないわけではないのです。


さらに、平成12年の少年法の一部改正により、14歳と15歳、つまり中学生の年齢であっても事件次第では刑事罰を受けることもある、というように法律が変わりました。

ただ、実際に少年刑務所に送られるのは16歳になってからです。それまでは、少年鑑別所での保護となります。


選挙権や酒やタバコを認める年齢の引き下げが議論されています。


あまりメディアには出ていませんが、

18歳以上には少年法を適用しない(刑法を適用する)

という議論もなされているようです。


つまり18歳以上については、

家庭裁判所

に送致するのではなく、

検察

に送致するということです。


何が違うか

をまとめておきますと、家庭裁判所に送致になった場合は、一番重くても

少年院

です。

そして、これは罰則ではなく、あくまで矯正をするための保護なのです。本人にとっては罰則でしょうが。


検察に送致されると、起訴されれば「懲役○年」などの罰則が科されるわけです。
「前科者」になります。


ここで、少年院の職員の方がこの議論の“矛盾”について話をされました。

もし18歳以上が検察送致になれば、これまで少年院に行っていた人たちが
“執行猶予になり野放しになる”
というのです。


この感覚は私にはよくわかります。警察官をやっていたときのざっくりした感想は

犯罪を犯してもこんなもの?

でした。

勇気ある女子高生が痴漢を捕まえてきても、相手が認めれば交番で手続きは終了します。
何十万円かの罰金は発生しますが、それで終わりなのです。


ところが、少年に関しては

この程度で少年院なの?

と思うこともあったくらいです。

そう、もしその彼が家庭裁判所ではなく検察送致になっていれば、間違いなく執行猶予がついてすぐに出られるか、不起訴の可能性すらあります。

つまり、少年法だから軽い、と単純にいえるものではないのです。




少年院にはどんな人がやってくるの?


少年院にやってくる人はどんな罪を犯してそこに辿り着くのでしょうか。

統計では去年までは

窃盗

が一番多かったそうです。

二番目が

詐欺

です。
詐欺については毎日のように新聞に出ていますからわかると思います。

今年はおそらく詐欺が一番になるだろう、と言っていました。
半数の人がこのどちらかの犯罪でやってきます。


この“オレオレ詐欺”(今は名称が違いますが)でやってくる人には

犯罪傾向がない(場合が多い)

そうです。


「犯罪傾向」を定義するのも難しいのですが、私は

(他人や社会に対する)怒り

だと思います。
これが犯罪の要因となります。


詐欺でやってくる人にこのような「怒り」はありません。
彼らは

楽して稼ぎたい

のです。

少年院の方の言葉を借りると、

彼らは自分のことを“特別”と思っており、普通に働いて普通に生きることが考えられない

そうです。


それで“特別な”仕事を求めているうちに「いい仕事があるよ」と誘われ、そっちに引っ張られてしまう。

彼らは無知なだけ

と思いたいのですが、「オレオレ詐欺」は結果的に被害額は相当なものとなるので、家庭裁判所としても少年院送致というもっとも重い処遇にするのだそうです。




新少年院法施行


今年(2015年)の6月に「新少年院法」が施行されました。実に60年ぶりの改正です。
といっても私も知りませんでした。

法務省ホームページ


その中で私が興味があったのが以下です。



保護観察所との連携の下,帰住先の確保・就労 等の支援の実施 ・出院者や保護者等からの相談に応じることが できる制度を導入




つまり、

少年院を出てからどうやって生きていくの?

ということです。

これは今までも行われてきたことだそうですが、今回の法改正で、それが

少年院の仕事

であることがはっきりと位置付けられたということです。


職員の方の説明によると、これまでの少年院の仕事は

矯正

が主だったが、

それが、「矯正」と「出てからどう生きるか」、これら二つが自転車の両輪のように回ることになる

に変わったそうです。

「出院者や保護者等からの相談に応じることができる」
とありますが、これまではできなかったのですね。

これまでは少年院を出た後は「保護観察所」の管轄となりましたが、今後は、少年院を出た人やその家族、そしてそれに準ずる人たち(私たちのような児童福祉の人間)の依頼に応じて、直接本人に合ったりして相談にのることができるようになった、ということです。


これは、私たち現場にいる人間にとっては“でかい”です。



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