オウム真理教地下鉄サリン事件でメディアに登場した一時保護所とは?

公開日: : コラム

 私の知人が工事現場で働いていたとき、小さい子どもを抱いた男性が近づいてきて、「この子を預かってください」と言ってきたそうです。
 その知人は行政サービスについて知っていたので、「児童相談所」に相談をすることを助言しました。

 行政は、“申請主義”(実際にこのような言葉が言われているかはわかりませんが)です。つまり、こちらから“お願い”をしないと動いてくれないのです。ですから、知らなければ、本来受けることのできるサービスを受けることはできません。

 ただ、児童福祉の世界は別で、子どもが自ら動くことはできませんから、行政側から介入することがあります。
 
 この「児童相談所」、そしてそこが運営する「一時保護所」。子どもがいるかぎり、ここが関わってくる可能性は0%ではありません。

 NHKのある「子育て」に関する番組で、子育て中の芸能人が、

児相が訪ねてくると、「虐待をしているのでは」と周囲から見られるやん

と言っていました。

 関係者として、あんまり怖がるのは逆効果、と言っておきたいと思います。

 うちの娘も大声を張り上げて泣きじゃくることがあります。それを近所の方が児相に連絡をすると、児相は私の家を訪問しなければならないのです。

 ただ、子どもの姿を確認すればそれで終わりです。やましいことがなければ、玄関先で下手に抵抗をしない方がいいのです。

 ドキュメンタリー番組で見たことがありますが、児相の職員が警察官と一緒に家を訪ねてきて、玄関先が一種の修羅場と化します。しかし、一発目であんなことをすることはありません。
 児相が訪問をして子どもの様子を確認したいと申し出ても拒否を続け、しかも“虐待”の疑いがあり、“証拠”もあがっているレベルで起きうることなのです。



☑オウム真理教事件で脚光を浴びる


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出典 足成


【記事】子ども 将来阻む「過去」 asahi.com 2004年2月24日


「児童相談所」が世間に知られるようになったのは、1996年の「地下鉄サリン事件」でオウム真理教が社会の注目を浴びたときです。

 末端の信者には罪はないとはいえ、親が相変わらず自分の子どもを教団につれていくことを社会として許すことができない、と判断がなされたのでしょう。

 私も小さいころ、親にいろいろな宗教団体や思想団体に連れて行かれたことがありますが、今のところそれは“虐待”とは定義されていません。
 私は自分の子どもには絶対しませんが。



☑始まりは戦災孤児


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出典 足成


 多くの福祉施設がそうだと思いますが、その起源は戦後です。“行く場所がない”“食べるものがない”子どもたち、それをどうするか、というのが始まりです。

 この世界で私が尊敬する方もそれを言っています。

原点は“子どもの居場所づくり”


 もちろん実際に運営をするうえでことはそう単純ではありませんが、あくまで“原点”として胸に刻んでいることです。

一時保護所の機能は大きくわけて次の三つです。


緊急保護・・・保護者の入院や失踪、虐待などの理由で子どもの安全が確保できなくなったときの保護

行動観察のための保護・・・親子関係の修復などの“冷却期間”としての保護

短期入所指導のための保護・・・心理治療やカウンセリングのための保護




☑子どもは何をするの?


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出典 足成


 一時保護中は、子どもは原則として外部との交流や外出は禁止です。ただ、いろいろな行事を設けることで、外出の機会を作るなどの努力はしています。

 理念として掲げているのが、

・規則正しい生活
・適切な食事の提供
・安心、安全の確保

です。

 一時保護所にくる子どもは、ほぼ100%と言ってもいいくらい、家庭に何らかの事情を抱えています。

“子どもに当たり前の生活を保障すること”という言われ方がなされたりしますが、子どもたちは、「食べれるかどうかわからない」「親がいつキレるかわからない」など、物心がついたころから緊張感を強いられる毎日を送っています。

 自分のことを考えてみると、“人格者”とは言えないまでもいい親のもとで、安心して幼少時代を過ごすことができました。今考えると、それは感謝をしてもしつくせない、ことです。
 


☑課題は?


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出典 足成


 施設には文字通りいろいろな子どもが集まってきます。感情のコントロールや行動のコントロールが難しい子どもと、被虐待経験から周囲の言動に過敏に反応をしてしまう子どももいます。
 それらの子どもたちが共同生活を営むわけですから、子ども同士で安全を脅かすような問題が少なからず発生してしまうのです。

 これは、現場にいても感じる課題ですが、保護期間の長期化です。
 やはり、一時保護所は社会とは隔絶された場所です。次のステップに早く移るのがいいでしょうが、行き先がなかなか見つからないという理由で、保護が長期化してしまうのです。
 これは、子どもには関係がない理由ですから、行政側が解決しなければいけない問題です。



参考文献
「養育辞典」(明石書店)

 
 

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