小林正観さんからこう聞いた第二章⑩初心
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最終更新日:2022/08/23
小林正観さんからこう聞いた
正観さんのもとで出会った画家の方(Sさんとします)がいます。私がまだSKPに入社する前、京都の講演会に参加したとき休憩時間にSさんが似顔絵を描いており参加者の方々がそれを取り囲んでいるという光景を覚えています。正観さんはそれは笑顔で見つめていました。「同年代にこんな方がいるんだなあ」と思ったものでした。その後、SKPに入社し、私はSさんとも懇意にさせていただきました。ある合宿でのこと。Sさんが正観さんに対して、今の自分に何か一言欲しい、ということをお願いしました。正観さんが言ったことは「初心忘るべからず」でした。Sさんは年々活躍の場を広げていますが、きっとこの言葉を守り続けているのでしょう。
それに通じる話ですが、正観さんが商売をされている方によく話していたことがあります。それは、始めたばかりのときはとにかく目の前の人やものやことを大切にすることができるものだが、商売が軌道にのると、急に経営方針などを立て、その方針にそぐわないことをやらなくなる、という話です。目の前の人やものやことを大切にしてきた結果として軌道にのったのだから、そのまま目の前の人やものやことを大切にし続ければいいのだ、ということです。経営方針を立てること自体が問題というよりは、それによって目の前の人やものやことを大切にしなくなる、そういう人間の業を正観さんは見てきたのかもしれません。
私にはSさんのようにこれといった才能はありませんし、会社を経営しているわけではありませんが、正観さんのこの教えは大切にして生きています。私は児童福祉の仕事をしています。福祉という仕事がら、生活に困った方から相談があったりします。私がいる分野は児童ですので、成人した方々からの相談を断ったとしても誰からも怒られることはありません。そして、初心者のときは緊張感があるので断ることはできにくいのですが、経験を積むにつれて「この程度なら断っても問題は起きない」と当てがつくようになってくるのです。ただ、私はその一つひとつの相談事を大切にし、できるかぎりのことをするようにしています。正観さんから「『できない』『わからない』を言わない」と教わったということをどこかで書きましたが、「生活に困っているのでお金を貸してください」というような相談事には「できません」とはっきり答えています。ただ、行政につなげたりと、できるかぎりのことはしています。
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