小林正観さんからこう聞いた第二章⑧旅行
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最終更新日:2022/08/23
小林正観さんからこう聞いた
SKPに入社した年の秋、私は正観さんとヨーロッパへ行きました。これは毎年秋に行われる恒例行事で、正観さんとその仲間たちで10日程度の海外旅行に出かけます。正観さんの健康上の理由で結果的にこのヨーロッパ旅行が最後の海外ツアーになってしまいました。そこに参加することができたのは私にとって大変ラッキーだったと思っています。ここで少しお金の事情を。SKP時代の私が正観さんの講演会に参加するとき、参加費は自分で払っていました。会社の経費と思われていた方もいたようです。合宿はスタッフですので経費ですが、客としての参加の場合は自払です。私はスタッフとして合宿に参加しておきながら仕事そっちのけで、正観さんにくっついてみんなと遊びに行っていました。後で、正観さんが「くりようかんさんは私の話が聞きたいのだからいいのです」とかばってくれていたという話を聞きました。旅行の参加費はどうだったかというと、半分は自払でした。私の場合はそれに加え通訳としての参加でもあったので、その分として正観さんから日給として一万円もいただきました。
その旅行は、ドイツ、スイス、フランス、スペインを12日間かけて巡るというものでした。この旅行だけで一章分書けるくらいの内容はありますが、ここでは、スイスのとあるレストランで正観さんから教わったことを書くにとどめます。私と正観さんと数名で夕食をとるためにあるレストランに入りました。お客さんはひとりもいなかったのですが、ウェイトレスの女性に「そんなにたくさん一緒に座れる席はありません」と入店を断られてしまいました。私は、テーブルをくっつければ席は作ることができることを説明しましたが、正観さんが「出ましょう」と言ったのでみんなそのレストランから出ました。結局すぐ隣のレストランで食事をすることになりましたが、その場で正観さんがこんな話をしてくれました。「ある大手雑貨店の社長は社員に対して『できない、知らないを言わない』という教育をしている。くりょうかんさんもこれを覚えておいてくださいね」と。また、これは私が誰にも伝えていないことですが、パリで15名くらいで有名なカフェに行ったとき注文を取りに来た若いウエイターが「カフェオレを15個でいいね」と勝手に注文を決めてしまったのです。もちろん断り一人ひとり注文をしました。私は25歳の頃にフランスに一年間住んだことがあり、このような対応は普通に経験していたので驚きはしませんでしたが。もちろん親切な方もたくさんいます。フランスで生活を始めたばかりのころ、フランス語の勉強にちょうどいい本を探していたら、店員の方が「あなたに合った本を探しましょうか」と言ってくれたこともあります。しかし、そのレストランの対応のおかげで正観さんからこの話を聞くことができたことを考えるとラッキーだったとも言えます。私は今でもこの正観さんの教えを守って生きています。頼まれたり相談を受けたときに、まず「どうやったらできるか」を考えることが当たり前になっています。「できません」という言葉を自分に禁じることによって脳みそが勝手にできる方向で考えるようになるみたいです。
正観さんから頼まれたことで私が忘れられないのが、「私の部屋のパソコンのネットがつながらないので夕方までにつながるようにしておいてください」というものです。光楽園の正観さんの部屋のパソコンです。私は特にパソコンに詳しいわけではありません。電話でサポートセンターに問い合わせ、その指南に従っていろいろ試しましたがつながりません。光楽園があるのは兵庫県の宍粟市というところ。業者を呼んだら出張費だけでいくらかかるかわかりません。原因がわからず3、4時間が過ぎました。万策尽きて力が抜けたそのとき、パソコンのケーブルが目に入りました。そして、そのケーブルを新しいものと取り換えました。するとインターネットがつながったのです。その夜、出先から戻った正観さんに「つながりました」と報告しました。「くりようかんさんが直したんですか?」と驚かれました。その一方でやっていないこともあります。光楽園のお庭を見ていた正観さんが「芝桜を植えると春にはきれいですよ」と言いました。言い方として私に頼んだかどうかは定かではないのですが、私は「できません」とは言いません。その後、調べて予算を計上し(苗代だけで10万円)方法も考えましたが実行には移しませんでした。あとは、赤城正観荘から「窯を作ってください」と頼まれましたが、それも「できません」とは言っていませんが結局やりませんでした。ただ現在、赤城正観荘には立派な窯があるようです。
私は正観さんからの頼まれごとを通じて「できない、わからない、を言わない」ということは精神論ではなく、「そのほうができる方法が見えてくる」という現実主義的な方法だということがわかりました。
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