福祉ではたらく1%の幸せな人々⑦苦しみとは思い通りにならないこと
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福祉ではたらく1%の幸せな人々
「思い」を持つことはいいことだとされています。福祉という分野でも、思いの強さが評価されるという理由で、面接でも思いを語る方もいます。ただ、私が面接官の場合はそこは評価の対象にはなりません。ちなみに、私がみるのは「謙虚」であるかどうかです。謙虚とは「私の力ではないと思う心」のことです。また改めてとりあげたいと思います。
なぜ「思い」が大切だとされるのでしょうか。それは、何かがなされるということは、イコール、まず思いがあり努力によって現実をその思いに近づけるということだと教わってきたからではないでしょうか。逆に言うと、思いがない人は「やる気がない人」と捉えられるのかもしれません。
ただ、自分の人生を振り返ると、思い通りにならなかったことの方がはるかに多いことに気が付きます。私は「人生は展望をもって…」と強調する方に、「ではあなたの今の人生は5年前に持った展望の通りなんですか?」と質問をしたことがありますが、答えは「ノー」でした。
「思い」は持たなくてもいい、というのが私の結論です。「思い」を持つから「思い通りにならない」という状況がうまれます。まして、自分以外の人についてはなおさらです。福祉において、自分が関わる子どもが思い通りにならない、と職員が悩むことで一番苦しむのは子どもです。「私の思い通りにしようとしているわけではない。このままでは本人にとってよくない」という言い分もありますが、本当にそうでしょうか。私は自分の過去を振り返った結果、すべて、「結局、子どもを自分の思い通りにしようとしているだけではないか」という結論にいたりました。
それでも、思いが強ければ強いほどいい仕事ができる、と思われている方に向けてレンブラントの話をさせていただきます。レンブラントはオランダの17世紀の画家です。その代表作のひとつが「夜警」です。20人くらいの男性が描かれているのですが、その20人というのはレンブラントに依頼をした人たちなのです。みんなでお金を出し合ってレンブラントに描いてもらおうというわけです。そして、面白いのは、出した金額の多さに比例して大きく描かれているということです。つまり、その中で一番大きく描かれている人物が最も多額のお金を出した人物というわけです。
まず、レンブラントは頼まれごとでその絵を描いた、そして、おそらく依頼主の要望で構図-お金を多くだしている人物を大きく描く-を決めたのです。それで誕生したのがこの名画です。
つまり、仕事は頼まれごとを一所懸命にやればいい、ということです。